技術コラム

精密板金の連続曲げとは?曲げ順序から工程設計まで徹底解説

精密板金の連続曲げとは?曲げ順序から工程設計まで徹底解説


連続曲げ(多回数曲げ)とは?

連続曲げとは、1枚の板金素材に対してプレスブレーキ(ベンダー)を用いて複数回の曲げ加工を施し、
複雑な断面形状や立体形状を作り出す加工手法のことです。

単純なL字やU字形状であれば1〜2回の曲げで完結しますが、電子機器・医療機器・半導体装置に使われる板金筐体では、フランジ・リブ・取付け座面・気密用の折り返しなど、多様な形状要素が一枚の板に集約されます。結果として、曲げ回数が10回・20回を超えるケースも珍しくありません。

板金加工の文脈では「多回数曲げ」「複合曲げ」とも呼ばれ、ベンディング加工のなかでも難易度の高い領域に位置づけられます。ただし、「回数が多い=必ず高難度」ではなく、形状の複雑さや要求精度によって難易度は大きく変わります。

アルミ板金の曲げ加工の種類と加工のポイントとは? →

連続曲げが難しいとされる3つの理由

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連続曲げの精度を確保するためには、1回ごとの精度管理と、全体工程を見通した段取り設計の両方が不可欠です。

曲げ順序を1つ間違えると、以降の工程が成立しない

連続曲げでは、曲げる順番が厳密に決まっています。
理由は単純で、先に特定の面を曲げてしまうと、後の工程で金型やベンダーのフレームとワークが物理的に干渉してしまうからです。

弊社が手がけた医療用機器フレームの14回曲げでも、「この順番で進めなければ次の曲げができない」という制約が全工程にわたって連鎖していました。曲げ順を1ステップでも誤ると、そのまま不良品になります。熟練の作業者であっても、複雑な連続曲げでは事前に紙や3DCADで曲げ順序を検証してから加工に入るのが標準的なアプローチです。

スプリングバックが回数分だけ積み重なる

板金を曲げると、材料が持つ弾性力によってわずかに元に戻ろうとします。これが「スプリングバック」です。1回の曲げであれば補正は比較的シンプルですが、連続曲げでは各ステップのスプリングバック量が積み上がり、最終形状の寸法に影響します。

弊社の22回曲げ事例(医療機器向けタッチパネルカバー)では、材料の硬さのロット間バラつきがスプリングバック量の差として現れるため、最初の1曲げを全数同じ加圧で行い、角度の差異によって3パターン程度に分類してから、それぞれに「角度だし」を行うという工程管理を採っています。22回積み重なる前に、最初の段階でバラつきを吸収するという考え方です。

金型とワークの干渉が予測しづらい

連続曲げで最も見落とされやすいのが、金型(パンチ・ダイ)とすでに曲がっている部分との干渉です。
1回目・2回目の段階では問題なく加工できても、後半の工程で「すでに曲がっている面」がベンダーのバックゲージや金型ホルダーと干渉するケースが起きます。

弊社では深さ255mmに及ぶ筐体の曲げ加工をご依頼いただいたことがあります。通常のセットアップではベンダー本体と製品が干渉してしまうため、特殊な専用金型を使わずに熟練作業者の工夫で突破しました。こうした干渉の可能性は、3DCADの展開図だけでは見えにくく、実際の金型の形状・高さ・ホルダー形状を把握した加工者でなければ判断できません。

設計者が事前に知っておくべき、連続曲げの設計ポイント

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板金筐体の設計者が「加工側に丸投げ」するのではなく、設計段階でいくつかの制約を意識しておくだけで、試作後の手戻りは大きく減ります。以下は、弊社にご相談いただく際によく確認することになるポイントです。

曲げ高さと板厚の関係

曲げ加工には「最小曲げ高さ」という制約があります。曲げる面の高さが低すぎると、ダイの溝に板材が正しく入らず加工が成立しません。一般的な目安は「板厚×2〜2.5倍以上」ですが、金型形状や材質によって変わります。

設計図面上は問題のない寸法でも、実際の加工では曲げ高さの不足が発覚するケースがあります。複数回曲げ後の形状で最小高さを下回る面が生じないか、展開図の段階で確認しておくことが重要です。

穴・切り欠きと曲げ線の距離

曲げ線の近くに穴や切り欠きがあると、曲げ加工時に穴が変形したり、端部が波打ったりします。板厚2mm以下の場合は「板厚×4倍以上」、2mm超では「板厚×3.5倍以上」を曲げ線からの最小距離の目安として設計に織り込んでおくのが安全です。

どうしても曲げ線近くに穴が必要な場合は、「切り起こし」形状を使うことで変形を抑える設計も選択肢のひとつです。自社工程で難しい場合は、加工業者と早い段階で相談することをお勧めします。

筐体設計におけるポイント →

材質ごとの曲げ特性の違い

精密板金筐体でよく使われる材質の曲げ特性を整理します。材質によってスプリングバック量や割れリスクが異なるため、設計の段階で意識しておくことが重要です。

材質 スプリングバック 曲げ最小R 注意点
SECC(亜鉛メッキ鋼板) 中程度 板厚×1倍程度 標準的な筐体材料。加工性が高い
SUS304(ステンレス) 大きい 板厚×1〜2倍 硬く補正量が多い。YAG溶接と組み合わせることが多い
A5052(アルミ合金) 小〜中 板厚×1倍程度 柔らかいが腰折れしやすい。公差管理に注意
SPCC(冷間圧延鋼板) 中程度 板厚×1倍程度 SECCに比べメッキなし。錆対策が必要

ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、板厚・曲げ角度・金型形状によって変わります。弊社では材質と板厚の組み合わせに応じて実績ベースの補正値を保有しており、最初の試作段階からご相談いただけます。

連続曲げの精度を高めるための工程設計の考え方

連続曲げの工程設計とは、「どの順番で」「どの金型を使って」「どう角度を補正しながら」加工を進めるかを、最終形状から逆算して決めることです。

曲げ順序の決定:後工程を先読みする段取り設計

工程設計の出発点は「最後の曲げ」から考えることです。最終形状を頭に浮かべ、「この面を最後に曲げるためには、前にどの面が立っていなければならないか」を逆順に辿っていく思考が基本になります。

弊社の現場では、この曲げ順の検討を「頭の中でシミュレーションを走らせる」と表現します。複数台のベンダーの稼働率・作業者の特性・金型の段取り替えコストも考慮しながら、1日単位でスケジュールを組む。戦略次第で1日の加工数が変わるため、段取り設計は単なる手順決めではなく、生産全体の効率に直結する仕事です。

材料硬さのバラつきへの対応:パターンごとの「角度だし」による精度確保

同じ材料を同ロットで発注しても、硬さには微妙なバラつきがあります。硬さが変わればスプリングバック量が変わり、同じ加圧でも仕上がりの角度が変わります。1〜2回の曲げであれば誤差の範囲に収まることが多いのですが、22回曲げになると、微小な角度ズレが積み重なり最終形状に大きく影響してしまいます。

弊社ではこの問題に対処するため、最初の1曲げだけを全数同じ加圧で加工しています。そうすると、大体3パターン程度で角度違いの束ができるため、そのパターンごとに加圧を微調整して再度「角度だし」を行ってから次の工程へ進みます。工程が増えるように見えますが、後半で不良が出てスクラップになるのを防ぐことができ、結果的に高品質な製品を効率よく生産することにつながっています。

深曲げ・干渉回避:特殊金型を使わない熟練の工夫

深さ255mmの筐体では、通常のセットアップのままでは加工の後半でワークがベンダー本体に当たります。選択肢は「専用金型を製作する」か「作業者の工夫で対応する」かの2つです。

弊社では後者を選び、既存の金型と治具の組み合わせを工夫することで特注金型なしに対応しました。金型製作には費用と納期がかかるため、特に試作・小ロット段階では「工夫で突破する」選択が顧客にとってもコストメリットになります。ただし、すべての深曲げ形状に同じアプローチが通用するわけではなく、形状によっては専用金型が必要になる場合もあります。

島田工業が対応してきた連続曲げの実例

ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、多くの設計者の方は「この形状、加工できる業者があるだろうか」と不安を持ちながら発注先を探しています。以下に、弊社が実際に手がけた連続曲げの事例を紹介します。

22
医療機器向け
タッチパネルカバー
14
医療用機器フレーム
(曲げ順序が命)
255mm
深さ255mmの筐体
(機械干渉を工夫で突破)

 

医療機器向けタッチパネルカバー:22回曲げの事例

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医療機器に使用されるタッチパネルカバーで、1枚の板金から22回の連続曲げで形状を作り上げた事例です。

曲げ回数が多いと、微小な角度ズレが22ステップ分蓄積し、最終寸法が公差を外れるリスクがあります。弊社では前述の「3パターン管理」を採用し、最初の1曲げで材料の硬さのバラつきを吸収してから後工程に進む方式を取ることで、全数を安定した寸法精度に収めています。

  • 曲げ回数:22回
  • 用途:医療機器向けタッチパネルカバー
  • 精度管理の工夫:材料硬さによる3パターン分類+角度だし
医療機器向けタッチパネルカバー:22回曲げの事例はこちら →

医療用機器フレーム:14回曲げ、曲げ順序が命の加工

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14回の連続曲げで製作する医療用機器フレームの事例です。この製品は「曲げる順番を1ステップでも間違えると、以降の加工が物理的に成立しない」という構造を持っています。

事前に全工程の曲げ順序を紙で検証し、金型の組み合わせと使用順を確定してから加工に入ります。段取り替えの回数を最小化しながら、14工程を一筆書きのように進める設計です。

  • 曲げ回数:14回
  • 用途:医療用機器フレーム
  • 精度管理の工夫:全工程の曲げ順序を事前に検証・確定
医療用機器フレーム:14回曲げの事例はこちら →

深さ255mmの筐体:機械干渉を工夫で突破した事例

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深さ255mmに及ぶ筐体の加工事例です。ワークの深さがベンダー本体のフレーム高さに迫るため、後半の曲げ工程でベンダーとワークが干渉する問題が生じます。

特注の専用金型を製作すれば対応できますが、費用と納期のコストを考え、既存の金型と治具を工夫した組み合わせで対応しました。試作段階での追加コストを抑えながら、要求形状を実現した事例です。

  • 製品の深さ:255mm
  • 課題:後半工程でのベンダー干渉
  • 対応:特殊金型なし、既存金型の工夫で突破
深さ255mmの筐体:機械干渉を工夫で突破した事例はこちら →

設計段階から相談できる、島田工業の連続曲げ対応力

弊社・島田工業は群馬県に本拠を置く精密板金加工メーカーです。医療機器・半導体製造装置・産業機械向けの複雑形状筐体を数多く手がけてきました。連続曲げに関して、弊社が提供できる価値を3点にまとめます。

曲げプログラミングと段取りを内製化している強み

弊社では、曲げ順序の決定・金型の選定・スプリングバック補正値の設定を含む「曲げプログラミング」をすべて社内で行います。外部の加工委託先に丸投げすることなく、設計図面を受け取った段階から工程設計を自社で立案します。

なぜこれが強みになるかというと、工程設計を内製化しているからこそ、設計段階のVE(バリューエンジニアリング)提案が可能になるからです。「この形状は曲げ順が複雑で不良リスクが高い。この部分を分割部品にすると工程が安定し、コストも下がります」といった提案を、設計段階の早い時点で行えます。

群馬県内でも数少ない「特級工場板金技能士」の資格を持つ熟練者が在籍しており、最新設備と職人技を組み合わせた技術継承が弊社の基盤になっています。

ロボットベンダーによる24時間無人稼働と品質安定

多品種中量生産に最適化した最新型ロボットベンダーを導入しており、材料の供給・曲げ加工・排出整理をロボットが自動で行います。最小ロット10個程度からの対応が可能で、24時間体制での無人稼働により、人手による角度ブレを排除した安定した品質を実現しています。

ただし、22回曲げのような材料バラつき管理が必要な加工や、深曲げ・干渉回避が必要な複雑形状は、ロボットベンダーだけでは対応できません。弊社では「ロボットに向いている加工」と「熟練作業者でなければできない加工」を見極めて使い分けており、両者の組み合わせが弊社の生産力の基盤です。

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設計から組立・検査までのワンストップ対応

弊社は精密板金加工にとどまらず、塗装・電気配線・配管組付・各種検査(水張り試験・エアリーク試験・ヘリウムリークテスト・通電試験・エージング試験)を一貫して社内で完結できる体制を持っています。

連続曲げで製作した筐体が組立・気密試験まで一社完結で進むため、工程間の情報伝達ロスが生じません。「曲げでこういう工夫をしたので、組立時にここを注意してほしい」という情報が同じ工場内で共有されるのは、外注を複数社に分散させる体制では実現しにくい強みです。

島田工業のワンストップ対応についてはこちら →

連続曲げの板金筐体加工のことなら、島田工業にお任せください

板金筐体の連続曲げ加工について、「この形状は加工できるか?」「どのくらいのコストになるか?」「設計の段階から相談したい」といったご要望に、弊社はお応えできます。

22回曲げ・深さ255mm・14回曲げ順序管理など、難易度の高い連続曲げ加工の実績を積み重ねてきた弊社に、ぜひお気軽にご相談ください。試作1個・最小ロット10個程度からの対応も可能です。


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よくあるご質問

Q. 連続曲げは何回まで対応できますか?
A. 現状、22回以上の曲げ加工の実績があります。上限を設けているわけではなく、形状・材質・要求精度をもとにご相談のうえで対応可否をご案内しています。

Q. 曲げ工程の設計図面がなくても相談できますか?
A. はい、製品の3DCADデータや概略の2D図面があれば、曲げ順序・金型選定を含む工程設計は弊社で立案します。設計段階からの相談も歓迎しています。

Q. 試作1個からでも対応してもらえますか?
A. はい、試作1個からご対応しています。ロボットベンダーを使う量産案件では最小10個程度が目安ですが、試作・検証段階では個数に関わらずご相談ください。